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ホーム > インタビュー > ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ(1):インタビュー

「ラダック 懐かしい未来」のへレナ・ノーバーグ=ホッジ 聞き手 枝廣淳子 Interview01

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ラダックで起こったこと、世界で起こっていること

 枝廣:
前回お会いしたときに、ヘレナさんは映画を製作中だと伺いました。完成したとのこと、まずは映画製作の背景についてお話いただけますか?
ヘレナ:
私が35年前に訪れて以来、ラダックでは経済開発と経済成長の影響で、不必要に失業が生み出されてきました。それまでラダックには失業はなかったのです。さらに汚染という深刻な問題も発生しました。そして、おそらく最も重要なことは、失業によって人々の間にそれまで存在しなかった激しい競争が生まれ、地元の人々の間に摩擦が生じたということです。
ラダックが初めて世界に国を開いたとき、――私は現地の言葉を習得していたからわかったのですが――、西洋的な都市型の消費者文化を美化するメディアのイメージが入ってきました。すると、若者たちは、自分たちの食べ物や衣服、言語、皮膚や目の色を明らかに拒絶するようになりました。このことは、ラダックではとても顕著でしたが、世界各地で見られることです。これを目の当たりにすることはつらいことでした。支配的なグローバル消費者文化が、自己否定や果てには自己嫌悪を引き起こしていたのです。これが暴力や怒りを増長させます。なぜなら、自分に自信がない人は、他人も大事にしないからです。ラダックでこうした様子を見ていた私は、『懐かしい未来』という本を書きました。
 枝廣:
そうでしたね。
ヘレナ:
数年後に、映画を制作しました。その間に本は50カ国に翻訳されました。人々は口々に「ラダックの話は私たちの話でもある」「ほとんど同じことが私たちの文化でも起こっている」「以前はもっと経済も仕事も安定していたし、自尊心もあり、もっと平和だった。しかし、経済開発のために今では似たような問題を抱えている」と言います。これが世界的な現象なのだ――私はそのことを映画で取り上げたかったのです。

映画「幸せの経済学より」

© 2011 ドキュメンタリー映画「幸せの経済学」

経済のグローバル化がもたらしたもの

 枝廣:
経済のグローバル化は、多くの人々に幸せをもたらすはずでした。でもそうはならなかったということですね。
ヘレナ:
ええ。経済のグローバル化は、各国が協調する方法の一つとして提案されました。世界各地で交流や取引を増やせば、相互依存とつながりが深まり、平和がもたらされると考えたのですね。でも実際には、国際的な取引が拡大すると、各国政府はインフラ開発や補助金によって、多国籍企業の支援をするようになったのです。多国籍企業の支援のために、ありとあらゆる方法で私たちの税金が使われました。多国籍企業が巨大化し、さらに力を増すにつれて、途方もない資源の無駄づかいが起こりました。私たちは貿易によってGDPを高めるために、世界中で同じ製品を輸出したり輸入したりしているのです。
また、企業が合併して大きくなりグローバル化すると、失業率が高まります。小さな企業がたくさんあれば、雇用も増えるし、仕事自体もそれほどストレスを生みません。経済活動がより少数の強力な企業や銀行に集中し、中小企業の数が減少していることは重要な問題だと思うのです。
 枝廣:
政府は人々を幸せにする責任があるのに、なぜ多国籍企業やグローバル化を後押ししているのでしょうか。
ヘレナ:
「国際貿易によってGDPを高め、国際貿易に携わっている企業の拡大を支援することが、人々の雇用確保や経済活動の推進に不可欠だ」という、持説というか、信念を持っているからでしょうね。

世界は前進しているか?

 枝廣:
前回お会いしたときに、こうしたグローバル化の問題やGDP以外の指標についてお話しました。その後の2〜3年の間に世界には前向きな変化が出てきていますか?
ヘレナ:
人々が気づきつつあり、議論が増えていることは確かで、大きな希望を感じます。いうまでもなく、金融危機の後には多くの人々が考え直すようになりました。しかし、各国政府は今のところ、しなければならないことをしていないことは明らかです。メディアでこれらの問題についてさらに議論を深めることが必要です。そうすれば、人々の行動がもっと増えるでしょう。人々が環境を守りたいと思う気持ちを貧困や失業についての懸念とも関連づけることができます。
 枝廣:
そのとおりですね。1月に「幸せ経済社会研究所」を設立しました。環境活動家はこれまで持続可能性のために活動してきましたが、経済や社会の問題構造にも取り組まなければなりません。これらの問題に取り組まずには、持続可能な未来はやってこないからです。

経済にとって大事なものは何か

 枝廣:
「経済成長は持続可能ではないが、脱成長は不安定をもたらす」という経済成長のジレンマがあります。「現在の構造においては、経済を動かし、雇用を創出し、老後の年金などを提供するためには、経済成長が不可欠だ」と言う論に対して、どうお考えですか?
ヘレナ:
間違いなく私の考え方は大半の経済学者とは違います。長年、世界でも工業化があまり進んでいない、ラダックやブータンといった地域にも住み、最も工業化が進んだ地域でも過ごした経験から、「経済について考え直すときには、農業や資源の採掘について深く理解しなくてはならない」と思っています。つまり、生態学的な見方ですね。「私たちの豊かさと私たちが使うものはすべて自然の中にある」ということを十分理解した上で考えれば、自然では「多様性」が必須であることがわかります。
生態系に関する知識と多様性の尊重が必要だということは、真摯に考えてみるとより明らかになります。小さな規模で土地にくまなく手入れしようと思えば、より多くの人を雇用することになります。林業や漁業では、大規模な皆伐や流し網ではなく、選択的に伐採や漁獲をするのです。
工業システムが作りだしたのは大規模な手法だけではありませんが、各国政府は現在、大規模な手法がさらに拡大し、大量破壊の度合いが増すように支援しているのです。教育や医療など、自然や人間と関わるほぼすべての分野では、より多くの人間の働き手が必要です。こうした分野では、人間の数を減らすのではなく、むしろ増やす必要があるのです。
現在、地球温暖化対策として効率的な技術の開発が進んでいますが、実際にはさらに問題が悪化するのではないかと気がかりです。技術やエネルギーによる、雇用のない――人間が使い捨てになる――成長ではないかと。技術やエネルギーは環境にはやややさしいかもしれませんが、人間にやさしくありません。多様性の修復と本当に健全に繁栄する生態系のためには、人間にもやさしくなければなりません。
これに取り組むべき理由の一つは、自然とこのように関わる小規模な農業では、土地や水の一単位当たりの生産量がはるかに多くなるからです。
 枝廣:
そうは考えない人が多いですよね。多くの場合、規模が必要だと考えられています。
ヘレナ:
ええ、多くの人口を養うためには、大きな規模が必要だという認識があるようです。それもわかります。しかし、土地を大農場としてではなく、たくさんの小さな農場として使用すれば、おろかで闇雲な機械の代わりに、働く人間の数は増えます。例えば、リンゴの収穫で、人間なら熟すまでに待とうと半分は収穫しない場合でも、機械ならばすべて収穫してしまいます。
世話をするという人間の知性は、生産性を大幅に向上させます。小さな規模で多様性があると、労働は楽しいものです。機械が便利だと思うと、人々は機械のように立っているだけという奴隷制が始まるのです。人間がまるで機械のように扱われます。しかし、より独立した家族経営で、多様性があり動物もいる農業では、労働は実のところとても楽しいのです。私たちは根本的な方向性について考え直さなければなりません。
 枝廣:
私たちは、経済や経済学の再構築を行うと同時に、社会の論理も変えていかなければなりません。例えば、多くの人々が「機械や技術は自分たちよりも優れている」と思っています。私たちは、自分で自分のたづなを握り直し、自分への信頼を取り戻さなければならないと思うのです。
ヘレナ:
そうですね。まったくそのとおりです。

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