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タイのエコロジー思想家 スラック・シワラック 聞き手 枝廣淳子 Interview03

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何かが根本的に間違っている

枝廣:
お時間を頂き、ありがとうございます。私は長年、環境問題の分野に取り組んできました。その中で、こうした問題に根本的に取り組むためには、幸せ、環境、経済、社会について、大局的な見地から考え、互いにつながっている構造を知らなければならないことがわかりました。
スラックさんはずいぶん長い間、この分野でご活躍されていますが、ここ最近の世界について、どうお考えですか? 一人あたりのGDPに関しては、世界はますます裕福になってきていますが、同時に、多くの人々が切実な状況に陥っています。
スラック:
そうですね。現状では、国際企業がすべてを牛耳っています。米国のような超大国でさえ、国際企業によって動かされています。国際企業は、自分たちが民主主義者で、人々に貢献していると主張しますが、残念ながら、彼らは人々のことは気にかけていません。人々を、モノを買う人たちだと見なし、非常に影響力の強い広告によって操ります。そのため、人々は消費主義という新しい宗教を信仰するようになりました。自然資源の破壊も気にしません。私たちの現在の世界は、こうした大きな苦境下にあると思います。
枝廣:
そうですね。私たちはどうやってこのような仕組みを作ったのでしょうか? 多国籍企業がもたらした被害は確かに甚大ですが、誰に責任を問うべきなのでしょう?
スラック:
仏教徒として話すと、すべては心次第で善にも悪にもなるのです。現代の人々は間違った考えをしていて、「権力がすべて」「お金がすべて」「所有することがすべて」だと思っています。
枝廣:
本当にそうですね。
スラック:
その心は深く根ざしていて、西洋文明のルーツまで戻ります。現代の哲学は、「我思う、故に我あり」("Cogito ergo sum")という言葉を残した、フランスの哲学者のルネ・デカルトに始まりました。私たちは「思考」に縛られているのでしょう。
枝廣:
そうですね。
スラック:

思考は、益と害をもたらします。"Cogito"は「考えること」を意味します。他者と競争して、他者を追い越すため、個人主義、エゴイズムのために考えるのです。私にとっては、考えることの方が危険です。私たちはとても利己的になりました。だから私たちの世界は苦境下にあるのです。

ルネ・デカルト フランス=ハルス画(1648年)

ルネ・デカルト
フランス=ハルス画(1648年)

今はデカルト派の時代で、裏付けや科学的な根拠は不可欠とされています。しかし世界には、裏付けや論理や物質主義を超えたもの、スピリチュアルで、超自然的なことも存在します。東洋には、西洋とは異なる文明やライフスタイルがありましたが、西洋に対して開国せざるを得ませんでした。そして開国後、私たちは盲目に西洋と同じ道をたどりました。

日本は特に、西洋と競合したがっています。日本が戦争でロシアに勝ったとき、西洋諸国すべてを打ち負かせると感じました。それ故に、第二次世界大戦が勃発したのです。そして今、あの戦争で敗れたにも関わらず、広島と長崎で日本は何も学びませんでした。だから、福島での原発事故が起きたのです。私たちは学ぶべき時期にきているのではないでしょうか。何かが根本的に間違っていたのです。日本は、ルーツに帰るべき時なのでしょう。

枝廣:
ええ。

叡智は森にある。
学ぶべき「木が育つための4つの要素」

スラック:
ラビンドラナート・タゴール (インドの詩人、思想家)

ラビンドラナート・タゴール
(インドの詩人、思想家)

今年はちょうど、ラビーンドラナート・タゴールの生誕150周年ですが、タゴールは、インドやアジアと、西洋との違いは、西洋は都市に集中していることだと述べています。「文明(civilization)」という言葉の由来は、ラテン語の「cives」です。しかし、東洋では、特にインドの習わしによれば、森を文明の源だと考えています。

仏教では、ブッダが都市を離れ、森へ行き、6年間放浪した後、森にある菩提樹の下で悟りを開いてブッダになったと伝えています。

ですから、叡智は森にあります。森には多様性、つまり調和があります。森から学び、自然から学べば、私たちはきちんと成長するはずです。自然を搾取せず、自然を愛し、自然に従うのです。ブッダは毒蛇とも話すことができました。木々からも学ぶことができます。私たちは自然から学ぶ時期にあるのだと思います。

ブッダは、木がなければ生きられないと言いましたが、木が育つためには4つの要素が必要です。

まず一つ目として、よい種が欠かせません。

二つ目に、種が育つためには、土壌や砂地に適応しなければなりません。嵐や雨や日光にさらされながら、粘り強く頑張ることで、木は育ちます。そして、木は大きくなると、受け取るよりもむしろ、鳥、ハチ、動物に、寛大に与えるようになります。葉を落とし、日陰を作り、実を与えます。

三つ目は、自分自身に正直でなければならないということです。しかし、最近の私たちは、偽善的で不誠実です。ですから、私たちは、誠実で、よい種を持ち、環境に適応する能力を持たなければなりません。しかし、真実を語らずに適応しすぎると、真実を見失ってしまいます。それでは過ちを犯すことになります。

最後に、忍耐が必要です。人間が、本当に成長すれば、木々のように寛大になるでしょう。動物たちや、ほかの人間たちに与えるようになるでしょう。しかし今は、与えようとせず、取ろうとするばかりです。根本的に間違っています。だから、私たちはタゴール、そして彼が学んだというブッダから学ぶべきなのです。

日本は、かつて仏教国でした。しかし、今の日本で仏教は儀式的なものに過ぎません。そろそろ、私たちは、仏教の真髄を学び直す必要があります。ブッダとは「覚醒」を意味しますが、仏教の真髄とは、いかにして覚醒するかということです。貪欲、憎悪、妄想からの覚醒です。一旦、無私無欲になれば、私たちが互いにつながっていることに気がつきます。あなたと私はつながっています。兄であり、妹なのです。一緒にいることで完結するのです。

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