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ホーム > インタビュー > 平山 征夫(6):インタビュー

元新潟県知事・新潟国際情報大学学長 平山征夫 聞き手 枝廣淳子 Interview11

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枝廣:
経済成長を続けることは必要でしょうか。
平山:
成長はたぶんもうしないでしょう。だから成長しなくてもいい社会を考えた方がよい。成熟によってそのような経済構造になってきたのですから、それを受け入れて、人々を幸福にするにはどうするか。成長力が弱まった社会において、新しい社会をどういうふうにつくるべきか。そちらのほうが大事だと思います。
枝廣:
この後、日本はどうなるんでしょう。今でも、無理やり成長させようとしていますが......。
平山:
アベノミクスの第3の矢である成長戦略として「国家再興戦略」というのがあるでしょう。あの後に英語が付いているんです、副題みたいに。「JAPAN is BACK.」と書いてあります。日本は後戻りすると。
枝廣:
すごい英語ですね......。
平山:
誰がつけたのか。最初は戦前に戻ろうというのかと思ったのですが、この副題はかつての成長力が高かったあの時代に戻ろう、戻す、成長力回復、ということを言いたかったのですね。
枝廣:
中央にいる人たちは、今先生が明確にお話しされたようなことを理解されていないのでしょうか? それとも理解しているけど考えないようにしているとか?
平山:
理解している人のほうが少ないでしょうね。理解している人もいるけれども、政治家には無理でしょう。成長を目指すと言わなければ選挙にならないですから。
しかし、現実にはイギリスでは、サッチャーは労働党の大きな政府から小さな政府に大転換しました。日本はほとんど、小さな政府への転換はしなかった。小泉さんの郵政民営化と「三位一体の改革」だけでしたね。それでも構造改革などちゃんとした小さな政府の政策は打たないで、福祉も大きい政府の時のままで双方の間をウロウロしている状態でした。
一番悪いのは、国民政党を永年看板にした自民党の政策は、双方の国民受けのいいところを維持したこと。福祉を公助でやり、産業界に対しては自由主義的にやらせるのですから、国の財政赤字が貯まってしまった。歳出に見合った税金を取らないで、福祉は大きい政府並にいっぱいやるのですから当然でしょう。
本当ならば、イギリスのように小さな政府を推進する政党と、大きな政府を推進する政党が2大政党になれば、国の形の選択はわかりやすいでしょう。それが日本では永年自民党という一党の中で政権を担う派閥が左右移動することでやってきてしまった。悪いことに対抗馬に立った民主党が本来なら大きい政府を明確にすべきところを、ここも左右複数のグループの寄り集まりのためはっきりしないまま、最大の公約に何と言ったと思います? "非自民"ですよ。民主党と自民党は、本当は選ぶ国の形が違う立ち位置にいないといけないのに、非自民という不明確な自民党と同じ広いウイングで政策を立てるから、国民政党が2つになっただけなんです。これでは政策論争は成り立ちません。
民主党の国会議員に「言っていることがわからない。一番の公約が"非自民"というのでは政策になっていない。それで選挙をやるの?」と言ったのですが、勝って政権についてしまったでしょう。でも、政策がはっきりしていないから、これもやる、あれもやるとなってしまった。それであっという間に財政赤字を増やしたでしょう。財政赤字は3.11で増えたのではないのです。それはきっかけであって、リーマンショックもきっかけです。
80兆から90兆円台に予算規模を10兆円以上増やした。その後政権は自民党に戻りましたが、予算規模は膨らんだまま戻らず、さらに増えそうな状況です。こんなことを続けていると破たんするかもしれない。国債が売れにくくなる時代がくるかもしれない。そうなれば国債の値段は暴落する危険が生じる。
それから、日本企業の政策が裏目に出る危険性が十分あります。昨秋の日本銀行の追加的金融緩和措置で、国債は日銀の直接引き受けに限りなく近づいている。発行と同時に、都市銀行に入った途端に買い上げているのですから。以前は発行後7年以上経過しなければ買わなかったのが、初めは異次元の金融緩和措置で3年たてば買うルールとなって、今回は発行直後でも買うことになった。政府・日銀は直接引き受けではないと言っていますが、これは非常に問題です。
日本銀行法で禁じている中央銀行の国債直接引き受けに限りなく近いからです。禁じているのは、お金を使う政府が日銀に引き受けさせることで、打ち出の小槌を持っているようにいくらでも国債を発行できるようになるからです。自動的に買ってくれる人がいるのは絶対駄目です。市場を通して、売れるか売れないか、レートはどの位なら買ってくれるかということをスクリーニングしなくてはいけないからです。そうやって市場を通すことで政府に発行モラルを負わせているのです。市場が警告を発するわけです。警告を聞かないで発行できる状態にすると、ヒトラーが戦前に行ったように、中央銀行が引き受けで好きなように軍費を調達して軍備を拡大していったようなことが生じるわけです。
戦前の日本においても、日本銀行も軍部に迫られて同じことをやった。だけど、ドイツの中央銀行のブンデスバンクの総裁は、ヒットラーの要求に対して辞表をたたき付けて辞任した。だからいまだにブンデスバンクは世界から尊敬されています。
両国とも戦後、めちゃくちゃなインフレになったでしょう。マネーが過剰に供給された結果です。それに近いことを現在やっているから、非常に危ない。早く今の政策はやめるべきと言いたい。
しかも、今回の措置で、上場投資信託をこれまでの買い入れ額の3倍に引き上げました。それで3兆円まで買えるようになったのですが、これも中央銀行の政策としては問題です。なぜかと言うと、投信には株が組み込まれているわけです。ということは、それを日銀が買い上げるということは、株価せり上げ、株高に協力することになるわけです。
このように中央銀行がいかにも安倍政策を支援するような政策をとるということは、市場のニュートラルであるべき価格形成に対して、中央銀行が株価の下支えをしていることになり、かなり問題です。市場の価格形成をゆがめるからです。
こういうことをなぜ禁じているかと言うと、インフレーションも悪いし、デフレーションも好ましくない。では、今アベノミクスを進めている経済学者たちが好ましい経済状況と言っている「リフレーション」とは何でしょう? それは「適度なインフレーション」という意味です。現状多くの国では2%位の緩やかな物価上昇を金融政策目標としています。果たしてそんな都合のよい人為的政策ができるのでしょうか。そううまくはいかないだろうと私は思っています。
今がそうですが、目標通り2%でもインフレになって、それに見合うだけ給料が上がらなかったら大変でしょう? だから、年2%ぐらいの緩やかなインフレが心地よい。それはそうした物価上昇をカバーするだけの給料が上がればの話です。2%物価が上がって、給料が3%上がり、実質1%成長するというのが現状では理想だとリフレ派の人たちは言っています。
ところが、現状を見ると給料は物価ほどには上がらないわけです。実質賃金はマイナスになっている。それだったら、デフレのほうがいいんです。デフレだと、給料はなかなか下げられないから、横ばいでも、デフレの分だけ給料は実質的には増えている。こんな変なインフレだったら、国民にとってはデフレのほうがよっぽどいいと言える。経済学者は何でそう言わないのかと思います。
デフレはスパイラルを起こすといいます。けれど、今お金を使うよりも、1年後、2年後に使ったほうがお金の価値が1%や0.5%増えるからといって、買い控えがどれだけ起こるのでしょう? 買い控えによって消費が縮小して、縮小することでさらにデフレ経済が進んで、スパイラル現象を起こすと言うのですが・・・。
インフレになっているほうが、年金生活者や弱い人にとっては厳しい。株に投資している人だけがもうかって、ベンツを買ったの何だのと言っていますがおかしいでしょう?
だから、私はインフレかデフレかどちらが望ましいかと問われればニュートラルです。通貨価値は上がりも下がりもしないというのが一番いいと思っています。

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