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ホーム > インタビュー > 塩見 直紀(2):インタビュー

半農半X研究所代表 塩見直紀 聞き手 枝廣淳子 Interview04

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「半農半X」は昔からあった!

枝廣:
半農半Xは、これまで日本でも何度もあったようなユートピア的な農村づくりでもないし、田舎暮らしをしようというのでもないですよね。たとえば「兼業農家とどう違うんですか?」と聞かれたら、どうお答えになりますか?
塩見:
兼業農家の方で、たとえばボランティアが好きな方とか、自治会活動を頑張っているとか、それに賭けているようなお年寄りや、兼業農家で意見を持っているなら、僕の目から見れば半農半X。でも、その方が兼業農家という言葉が好きならそれでいいし、すべて半農半Xでくくろうとは思いません。
中には、専業農家で16町とか広い面積をやりながら、まちづくりをバリバリやっている人もいます。前に東北で出会った方は、大きな農業をしながらNPOをつくって、フリースクール的なことをされていて、それを専業だけでとらえていいのか、とも思います。でも、専業農家というプライドがあるならそれもいい。
いろいろあっていいと思います。昔は農をしながら大工さんがあっただろうし、武士も暇な時は鍬を握っていましたよね。
枝廣:
百姓という言葉が、もともとそうですからね。
塩見:
『宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み』西岡常一著

『宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み』西岡常一著

はい。僕が好きな事例では、奈良の宮大工の西岡常一さんの本で読んだのですが、先祖の言い伝えとして、「宮大工は、暇なとき普通の大工仕事をするな。そのときは畑仕事をしろ」というのがあって、畑・田んぼを持っておられたそうです。土とか植物に触ることで木の心がわかるし、その仕事をする中で、次の仕事の段取りが見える。現在は結構スケジュールを入れがちな時代ですけれども、何かそこで一歩スローダウンしていって、未来を考える時間があってもいいだろうし。それはすごく教訓的な話だなと思って。西岡さんの本を読んでいましても、「半農半工」という言葉があります。

それから、『夜明け前』などを書いた小説家の島崎藤村も、大正15年に書いた『嵐』という小説で「半農半画家」という言葉を使っています。主人公のお父さんが、画家を目指して芸術学校に行っている子どもたちに、「半農半画家でいいんじゃないか」というせりふを、ポロッと言うんです。

そう考えると、日本人は、島崎藤村の時代も、いろんな言い方をしていた可能性があるなと思います。

枝廣:
面白いですね。

「農の時間」、「Xの時間」

枝廣:
たとえば自給率を上げなければと農業から入ったとしたら、半農、農業にかかわるところだけでいいと思うんですけど、Xも大事なわけですよね。そのあたりを少しお話いただけますか。
塩見:
農の時間とXの時間はすごくリンクしているように感じています。たとえば僕の場合、草刈りのときによくひらめくので、ポケットの中に紙と鉛筆を入れておいて、メモしています。空にはヒバリとかセミが鳴いて、カエルがいて、ヘビがいて、風が吹いて、という中で、こんなプロジェクトはどうかとか、こんなエッセイのネタがあるんじゃないかとか、すごくひらめきやすいのです。
特に重要だと思うのは、農をすることによって、人間中心主義というものを超えられる。人間のおごりや自然のコントロールといったことに対し、自然の中に内包されるとか、寄り添う、従う、学ぶ、といったものを農から学べるということです。
その一方で、僕が農から学べるものには、クリエイティビティというものもあります。村人を見ていても、美意識が高くて、たとえば、「草ぼうぼうなのが何か美しくない」ということもあるし、土壁の塗り方や、あぜのぬい方が、すごく美しくて。
それから感受性。レイチェル・カーソンのいう「センス・オブ・ワンダー」といったものも、農から即、学べる。
今年、すごくかわいそうなことをしたのは、草刈りをしながらカエルを20匹以上殺しているんです。でも、カエルを殺したことに対して何も思わなくなったらおしまいだろうし、宮沢賢治とか金子みすゞさんならどうしただろうかとか、そんなことを思っています。それが、自分のXにもプラスの影響を与えていて、すごく善循環をしているような気がします。

社会起業家が今、千葉に移住されたりしていますけれども、すごくいい傾向で、社会起業家としてさらにいい方向に行ってもらえるんじゃないかなと思います。私の理想は、半農半社会起業家が増えたらいいなと思っています。

『雨ニモマケズ』宮沢賢治著

『童謡詩人 金子みすゞ―いのちとこころの宇宙』矢崎節夫 (監修)

『センス・オブ・ワンダー』レイチェル・カーソン著

半農半Xは、自然に従い、
与えられた天賦の才を発揮すること。

枝廣:
「このままでは」と思っている人はたくさんいるけれど、今の時代で、農業だけではなくてXを見つけることの意義について、どういうふうに思っていらっしゃいますか?
塩見:
環境問題で「もったいない」という言葉が言われるようになりましたが、この国にあと3つの「もったいない」があって、「天与の才の未発揮」。「地域資源の未活用」、それから「人が出会っていない(多様な組み合わせの未コラボレーション)」というもったいなさです。まだまだ活かされていない、もったいない方がたくさんいらっしゃると思うし、新しい出会いによって、コラボレーションもまだまだたくさんできる。
Xを見つけるのは難しいと思いますが、Xがわからない方に対して言うのは、「自分のXにこだわらないで、周囲の方のXをプロデュースするというXがある」ということです。自分のXにこだわらずに、家族とか、ほかの方のXを応援することで自分のXが満たされるということもありますよね。Xイコール自分のものと思いがちですけれども、誰かを応援するというXは美しい形ではないかなと思います。
枝廣:
半農半Xというコンセプトが生まれて、それで救われている人はたくさんいると思います。私はまだ特技が何かわからない、何がXかわからないけど、でも半農半Xは自分のものにできるという。
そういう方のなかには、半農から入って半Xを広げられる方と、「自分がこの社会で、やりたいことをやっていきたい。だけどそれだけだと十分にお金がもらえないから、食べるものは作っていこう」という、半Xから入って半農に行かれる人といると思いますが、そのあたりはどうですか?
塩見:

両方ありますね。半農半Xの良さというのは、農をちょっと生活の中に加えるだけでも、鉢を1つベランダに置くだけでも、何か豊かになるし、やさしくなるものだと思います。Xは両面あって、Xにシフトされる方、農に少しチャレンジされる方、極端な方は会社を辞めるとか。

中国語版『半農半Xという生き方』
『半農半X的生活~順從自然,實踐天賦~』台湾・天下遠見出版社/2006年10月刊

中国語版『半農半Xという生き方』 『半農半X的生活~順從自然,實踐天賦~』台湾・天下遠見出版社/2006年10月刊

去年、台湾に行ったのですが、台湾で、自分の本を読んで「大学の先生を辞めました。それで、地域のコミュニティセンターの館長になりました」という人もいて、そんなこともあるんだなとびっくりしました。台湾版の本の副題が「順從自然、實踐天賦」――自然に従順で、与えられた天賦の才能を実践する。すごく明確なスタンスの2方向の4文字、合計8文字で表現されています。

それくらいシンプルに人生の方向がわかれば、こんがらがったのがときほぐされるような気がします。物事はもっとシンプルで、僕らが勝手に複雑化しているようなところもあるかなと思います。

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